携帯電話でみておられる方の為に、後半部です。
    
    
      ダブルスタンダードの話を続けよう。
    
    
      僕は最近ドキュメンタリィ映画に凝っていて、今年に入って数十本観ている。マイケルムーア("シッコ" は良かったが)や
    "靖国" も含め日本の戦争史など、ドキュメンタリィは
    制作者の意図によってはかなり偏ったものになるのだが、中にはきちんとジャーナリズムに基づいた作品もある。事実は物語よりも奇なり、で、オモシ
    ロい。
      "ブエナビスタソシアルクラブ" などは多少の脚色こそあれ人生のバイブル的作品だし、ガスヴァンサントの "ラストデイズ"
    などニルヴァーナのドキュメンタリィはどれもいいし、キューバ革命を扱ったものやボブマーリーやジョンレノンやジャックケルアックを筆頭にした
    ビート世代 などの伝記ものも素敵な作品が多い。
    
       中でも、 "モンドヴィーノ" という作品はワイン業界のダブルスタンダードを見事に教えてくれる。
     
    ネタバレ御免だが、話はまず、カリフォルニアのモンダヴィ家(現在はコンステレーションブランズ傘下)など他十数カ国でワイン醸造をコンサルティ
    ングをし ているミシェルロラン氏が、ワイン業界の現状(2004年の作品)を話す。
      そして、南仏のドマガサックを造ったエメギベール氏が、テロ
      ワール("地味"と翻訳されていたがもっ
    と深い意味があるように僕は思う)の 大切さやワ イン造りに必要 な哲学を
    話す。彼は言う『偉大なワインを造るのは詩人の仕事だ。それが今じゃ醸造家にとって変わられた。ミシェルロランのようなね』
     
    ロラン氏は言う『パーカーの遺産といえるものがあるとすれば、カーストのような階級制度を試飲という民主的な手法で打ち壊したこと。革命的さ』
     
    パーカーとは、ロランの友人でワイン評論家ロバートパーカーJr.氏。世界中のワインを試飲し特定のシャトーだからいいというような既成概念を壊
    し全てを 100点満点方式でスコアリングし世界のワインビジネスに多大なる影響を与えた。
     
    日本ではあまり知られていないが、彼が昨今のワインブームの火付け役だ。しかも、知らず知らずに我々は彼を基準値に置いているのだ。
     
    ワイナリー側はパーカー氏から良い点をもらおうと、タンニンが柔らかく色濃く凝縮味がありスムース(まさに現代ワインの基準)といった彼好みのワ
    インを
    つくる為に、パーカー氏の親友ロラン氏をコンサルタントに雇う、ロラン氏はその方法論をワイナリーに与える、ワイナリーは既存の製法を変更して新
    しいワイ ンを造る、これがまたいい点を獲得し高値で売れるのだ。
      我々日
    本人がありがたがって飲んでいる高級ワインのほとんどが彼らのシステムからでてきたものだそうだ(驚くほどみんながいいと言っているヤツばかり
    だ)。
      エメギベール氏は言う『ワインは死んだ』と。
    
      こういった話は我々酒業界ではさほど珍しい話ではない。
     
    今やバーの棚に並んでいる有名なお酒メーカーのほとんどは世界企業に飲み込まれている。商売上あまり言いたくはないが、そのほとんどのクオリティ
    は毎年低 下し ていっている、当然だ、合理化やコスト削減するのだからどこかで歪む。
     
    バーボンなんてあれだけ種類があるのに蒸留所は数える程しかない、一カ所で造ってそれぞれのメーカー(って言えるかな)で熟成させる。
     
    スコッチはそこまでの合理化はしていないが、コストのかかるモルティングなどは自社でやらなくなってきている。もうテロワールとは言い難い。テロ
    ワールが 失われてきたのでバリエーションやボトラーズブランドで付加価値を付けるしかない、マーケット拡大のための新商品の開発である。
     
    パーカー氏が興したワインブームほどの世界的ムーブメントは少ないが、昨今のハイボールブーム(祝!角瓶売上2割増)やシングルモルトブーム、焼
    酎ブー ム、地ビールブーム、日本
    酒ブーム、ベルギービールブームなどもほぼ企業発で、流行り好きで飽きっぽい農耕民族性日本人は、知らないでまんまと餌食にされている。
      日本人はお酒を神聖化しすぎる
    きらいがあるからだ、それは宗教にも似ている、が、残念ながらほとんどのカリスマは意図的に作られているのだ。
     
    日本人はテロワールを知らない、いや、知ろうとしていない。なぜならそれは自分に哲学やライフスタイルがなく混沌の中にいるからだ、どうすればい
    いのか自 分ではわからないのだ。(知らない方が、何もしない方が、"楽" だという馬鹿野郎もたくさんいる)
    
      さて、では、ロランやパーカーや大手企業が悪で、職人たちが善なのか?......勿論、違う。
     
    例えばスコットランドの蒸留所のほとんどが経営難だ、大手企業が手を差し伸べないと潰れっちまう、テロワールなんていってられない、蒸留所が無く
    なったら 伝統は しまい だ("淘汰" と "保護"
      もダブルスタンダードだが)。 それ
    に、意図的な金儲け的なブームであろうと何であろうと文化を広めていってるコトに違いはない、ベルギービールなんてそう素晴らしい酒だとは僕は思
    わんが ブーム がなければその文化を知る由もなかった。
     
    一方、文化や技術の伝承も重要である、企業の利益を追求しすぎて職人のノウハウを軽んじるケースが増えているのが現状だ。温故知新、余程のクリエ
    イティブ で
    ない限り新しいものは古きものを踏襲している、利益だけでマスプロダクトしても飽きられてしまい短命だ。流行りモンは消費対象にしかならないため
    ライフス タイ ル
    に定着しないし、何よりたいていはオモシロく(オイシく)ない、ホントは、そういうときにこそ職人の技術や経験や哲学が役に立つものなのだ。コン
    セプトの クリエイティ ビティこそ作り手
    の本分だ。バーもお客さんがお金に見えてくるほどの利益優先のビジネスモデルだと、なぜだか美味しいお酒は作れないしいい店にはならないし誰も救
    えないだ ろう(大手飲食チェーンがバーを作らないのもよくわかる)。
      結局どちらが欠けても生き残れな い。
      "ビジネス" と "理念" のダブルスタンダード。.................
    これは結構、現代社会の命題だろう。経営者はみんなこの "理想" と "現実" との葛藤だ。
    
      実は "金儲け" と "伝統" は、 "生" と
      "死" と同じで対極ではなく、表裏一体なのである。多くのダブルスタンダードは対極の様に見えて実は表裏一体なのだ。
    だからこそウマくバランスを見出さねばならない、それは "ビジネス" のためでも "理念" のためでもなく "世の中のヒトみんな"
    のためだ。
      そんなコトを考えさせられるドキュメンタリィ三昧です。
    
    
    
    
      ダブルスタンダードは他にもたくさんある。
      今、"言葉" が乱れているとよく言われる。それを矯正しようと教育者たちは努力しているが、我々が使っている
    言葉だって100年前とは明らかに変化している。 
      "言葉の進化" と "文化の保守" のダブルスタンダード。どちらに偏っても未来がない、流行り言葉も文化も両方大事なの
    だ。
    
     
    話はそれるが、少し前、とあるバーで、隣に座っておられた小太り中年男性(俺もか)が若いバーテンダー2人に漢字クイズをしていた。男性は漢字検
    定の一番 難し
    いのを合格したらしく得意げに若造相手に設問していた。2人のバーテンダーは後輩なので僕に目で助けを求めてきた、普段なら無視するが男性のあま
    りの無粋 さに腹
    が立ったので僕はきっちり答えてやると男性は嫌な顔をした、毒に変えるコトの得意な僕は、ところで、と切り返した、最近どんな文学読みました?
    と。そした ら男性はなんでそんなコト聞くのかという顔をして言った、
      『文学なんて読まない、検定の勉強で精一杯で本なんて読んでるヒマないよ』
      一同苦笑いした。
     
    しかし、普段使わないない資格って意味あんのかなぁ........着地点観てから必要な武器を手に入れる方がいいような気がするけ
    ど............バーテンダーみたいなブルーカラーにひけらかすだけより本の1冊でも読んだ方がいいと思うんだけどな、遊びにもなって
    ないんだ よねぇ.........
      そういえば、友人で英検1級TOEIC955点の運送屋いるけど英語喋ってんの見たコトない、めっちゃお金
    かけてたけどなぁ......
      あと、家では料理しないのよと毎日食べ歩き独身女性ブロガーの通う料理教室.....
      きっとチャンスがきたらまだ何かできると思ってるんだよね、自分の可能性を信じてるんだ、エラいねぇ.......
      "実利" と "先行投資" のダブルスタンダード。っ
    てとこか。
    
    
      核保有反対!軍隊反対!
      ............でも他国が攻めてきたらどうする?
      僕は戦争反対で自分から攻めたりしないが、自分の子供が危険にさらされたら迷わず武器を取る。
      "核保有"
    もだが、議論もしないなんて明らかに現実逃避だ。例えば気の狂ったヤツが突如爆弾を持って現れても誰にも守ってもらえない。
      戦わないなら死ぬしかな い。はたしてそれだけ で世界が平和になるのだろうか?
     
    マハトマガンジーは武器を捨てたが、現代これだけ価値観が違う人々の混沌の中で、みんなが武装している中で、社民党や共産党の言う様に武器を捨て
    る勇気 は、僕にはない。
      しかし、僕は、武器を手にしてでも対話するコトで争いは避け
      れると考 え ている。コミュニケーションこそ最大の武器なのだ、敵対意識では何も生まれない。
      "武装" と "秩序" のダブルスタンダード。
    
      外国のヒトを接待して街を歩くと驚かれるのは、自動販売機の多さ、ラブホテル(欧米にはない)、どの街にも溢れ変えるエロ産業。
     
    ここ数年、風営法の取り締まりが非常に厳しくなってるが、闇の世界の経営する店はあまり検挙されていない、個人でやってるようなザコを見せしめ的
    にやって る。
     
    そもそも風営法は、エロビジネスをやってはいけない、という法律ではない、警察(公安)の把握できる範囲ならやってもよい、という法律で必要悪と
    してエロ
    産業を容認してきた、裏でやられてヤクザな世界の資金源にならないようにするためだ。その結果エロ産業が街中にできた、今や世界一だ。他国はだい
    たい貧困 街か
    その近くに売春宿があるくらいで日本のように住宅街近くなんて見たコトない。日本人はまともな恋愛もできないエロいオッサンばかりだからだ、どう
    しようも な い。粋さがない。
     
    風俗もパチンコも道交法(ねずみ取りって!!)も奇妙なシステムの中にある、警察(権力者だけ)が好きな様に彼らのさじ加減で管理している、政治
    は利権も あるので触らない、人種問題と同じだ。結局国民のラ イフスタイルは無視だ。
      "白" と "黒" の間の "灰" というスタンダード。
    
      24時間やるチャリティ番組は偽善だ。
      でも少なからず考えるきっかけにはなる。
      "偽善" と "友愛" のダブルスタンダード。
      
      恋人の携帯電話をチェックするオンナは、"独占欲" と
      "正義" のダブルスタンダード。
    
      ホステスの結婚観。
      "華" と "幸" のダブルスタンダード。
    
      真実味のない、漢字も知らない女子アナのニュース番組(それを身近な存在とカンジてモテハヤすやすいオトコたち......)。
      "視聴率" と "ジャーナリズム"
      のダブルスタンダード。
    
      日本はクジラを食べる。お隣の国は犬を食べる。可愛いか可哀想か有り難うか。
      "動物愛護" と "文化" のダブルスタンダード。
    
      ふたりの女性を愛せるか!
      "妻" と "恋人" のダブルスタンダード。
    
      少子化だしグローバル社会になってきたし移民をもっと受け入れよう。
      でも外国人が来ると治安が悪くなるし文化が変わっちゃうかも。
      "開国" と  "鎖国" のダブルスタンダード。
    
      空前のランニングブームで大阪城公園は朝の4時から混雑。
     
    僕もがんばってジムに通っております(いっこうに痩せませんが)、でも、酒もタバコもやめる気ないし後輩たちには、エラそうにこうやって酒はヤル
    もんだ、 なんてカッコつけてる(因みに今僕は電動アシスト自転車で通勤してます、もうわけわからん)。
      僕の中の "佐藤弘道" と "松田優作"
      のダブルスタンダード。
    
      オトナなんやからしっかりせなあかんな。
      遊びが足らんから退屈な人間になんねん。
       "自律" と "童心" のダブルスタンダード。
    
     
    『うん、そう、木は切っちゃだめだよ.........オレさ、My箸持ち歩いてるんだ.........あ、大丈夫、ちゃんと毎回洗剤できれい
    に洗って るから』
      "eco" と "ego" のダブルスタンダード。
    
       中国は "自由主義経済" と "共産主義"
      のダブルスタンダード。
         ザッツエンターテインメント!やね。
    
    
    
      逆説的話。
      25年前、押井守の "うる星やつら"
    劇場版2作目で、今いる世界は誰かの夢の中で、僕らは亀の甲羅の上の仮想現実の街で暮らしている、という話があったし、同時期のOAV
    "メガゾーン23"
    では、実はすでに地球が滅び脱出して、一番いい時代と言われた1985年という年の世界を未来の宇宙船の中に造って、我々住人たちは造られた時代
    で地球が 滅びたコトも知らずに暮らしてる、とい
    う設定の物語もあった。マトリックスみたいなもんだ。僕らが今、生きている世界がホントの世界かなんてわからないし、ひょっとしたら神様はこの世
    界で一番 悪いコトしたヤツを天国に連れてったり、なんだったらこの世界こそ地獄もしくは天国なのかも知れなかったり、落語の
    "地獄八景亡者の戯れ" の如き場所なら良いのだが、この世界はどこか別の世界のゾウリムシの細胞の中だったらイヤか
    も................   
      亀が泳ぐ街には、スタン ダード自体がそ もそもないのかもな。
      "真理" は誰も知らないからこそ "生きる"
      ってのが楽しいんじゃないかな。
    
    
      最後に。
      ジョンレノンのドキュメンタリィのワンシーンから。 
     
    ある日の朝、ジョンの屋敷の庭にに若いヒッピーのオトコが侵入した。スタッフが捕まえると、ジョンが中から恐る恐るでてきてオトコになぜ侵入して
    きたのか 尋ねた、
    オトコは、ジョンの歌うビートルズの曲の歌詞に感銘を受け人生が変わった、だから会いたかったのだ、と言って鼻唄を歌う、ジョンは、その曲はポー
    ルが書い たんだ、僕も一 緒に書いたけど、と言う、するとオトコは、アナタの曲はどういう意味合いを持ってるのか?
    と、ドラッグをやってるのか挙動不審におどおどしながら尋ねる。ジョンも寝起きだからか怖いからか(キマッてたからだろうな、きっと)、ダルそう
    に、
      『意味はあったり.............なかったりさ..............最新アルバムに意味が...ある』
      『誰のコトを.....思って......歌うの?』
      『...............キミのコトは思えない、........自分......ときどきヨーコが精一
    杯...................いつも考えるのは、今朝快便
    だったかってコトとヨーコをどれだけ愛してるかってコトくらいさ............自分の曲が他のヒトの人生に似ていて
    も...........い いさ、仕方ない』
      オトコは失望したのか黙り込む。すると、ジョンは屋敷の方に歩きだし、
     
    『キミ、腹へってるんじゃないか?』と言って小汚いオトコを中に案内し一緒に朝メシを食い、レコーディングを見学させてやり一日を一緒に過ごす。
    
    
      宗教も含め僕らは不確かないくつも異なった価値観のある世界に生き
    ている、誰もその真理を知り得ない、夏休みの宿題の自由研究とその答えみたいなものだ。
      僕は思う。
      不安ならまず知ろう、
      わからないなら考えよう、
      迷ったらたずねよう、
      そのうち着地する場所が見えてくるさ。
      左と右がわかった時
      はじめて着地点に向かう準備がで きる。
      勇気を出して進みはじめたらあまり気を散らさず、振り返らず、どれだけエゴを捨ててバランスを保て るかだ。
      あとは全体を見渡して、ジョンレノンのように、すべて包括す
      れば良い。
      そうやってはじめて着地点に向かってまっすぐに進むのだ。
      道に迷ったり、立っている位置がわからなくなったらバーでひと息つけばいい、そのあと、バーから外へ出たら光が見えているハズさ。
      そうして行けばきっとみんなハッピーになれる。そう信じている。
      
      
      
    
       ダブルスタンダードのつじつま合わせで
      "中道" を求めるのは、自己満足なエゴでバランスではない。
         全体を包括して "中庸" を得るコトでこそ、みんながハッピーなバランスになる。
      
      
    
    
    
    2009.10.1加筆